Revolution™ Frontierを用いたShuttle Scanによる全肺野の4D撮影


千葉大学医学部附属病院
放射線部 橋本 拓磨 様

病院紹介

 

当院では2021年1月に新中央診療棟がオープンし、CT部門では4台のGEヘルスケア社製CTが導入されました。その中で、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH:chronic thromboembolic pulmonary hypertension)や肺動静脈奇形(pulmonary arteriovenous malformations: PAVM)に対する肺動脈造影を目的としたCT検査は、Revolution ApexとRevolution Frontierを用いて4D撮影を行っています。
256列CTであるRevolution Apexは160mmのワイドカバレッジを持ったvolume scanによる4D 撮影、64列CTであるRevolution Frontierはshuttle scanによる160mm以上の広範囲の4D撮影が可能である、といった装置の特徴があり、呼吸器内科医師と協議しながら検査を行っています。

本稿ではRevolution Frontier のshuttle scanが有用であった症例を紹介します。

橋本 拓磨 技師

 

技術紹介

 

Shuttle Scanは、寝台(テーブル)を連続的に往復させながら撮影することで、広範囲かつ時間分解能に優れたデータを取得することが出来る撮影法です。Revolution Frontierで使用することのできるVolume Helical Shuttle Scanでは、最大で31.25cmの範囲の4D撮影を行うことができます。
撮影中にノンストップでテーブルが往復するため、テーブルスピードは加速、安定、減速、を繰り返しますが、テーブルが加減速中の照射領域もスピード安定時の画像と遜色ない画質のデータが得られるため、無駄な被ばくを抑えつつ高品質な4Dデータを得ることが出来ます。

また、同じ範囲を連続的に撮影することから被ばくの増加が懸念されますが、Test Injectionから得られた灌流情報を基に最低限のスキャン時間に設定することや、ASiR-V(逐次近似応用再構成)を併用することで被ばくの低減を図っています。

 

症例紹介

 

患者情報
  • 50代 男性
  • 既往歴 右肺がん術後、肺動脈形成後
  • 主訴 喀血、血痰
  • 検査目的
    喀血の原因検索とシャント部位の同定が目的であり、喀血の原因血管として甲状頸動脈、外側胸動脈、 肋間動脈、下横隔動脈など広範囲の血管が疑われていました。

 

撮影手順
造影前に撮影した単純CT画像より、撮影範囲の確認と肺動脈と大動脈における造影剤の到達を同時にモニタリングできる断面の確認を行います。その後Test Injectionによって得られたTime Density Curveから、肺動脈のピーク時間と大動脈のピーク時間を算出し、スキャン時間を算出します(図1)。これにより喀血の原因血管を逃さず撮影しつつ、息止め時間の短縮、被ばくの低減を実現することが出来ます。当院の撮影条件は表1に示した通りです。

 


・グループ開始時間を肺動脈(PA)ピーク到達時間とします。
・撮影時間は[(大動脈(Ao)ピーク到達時間+6秒)-PAピーク到達時間]とします。
・撮影範囲、撮影時間を考慮してパス数を決定します。

表1 撮影条件

 

診断結果

 

図2に撮影で得られた4D-MIP画像を提示します。肺動脈相で右肺動脈は描出されず、大動脈相で肋間動脈および右下横隔動脈の拡張を認めました。また右肺静脈が描出されるのと同時に、肺動脈の残余が逆行性に造影されたため、右肺動脈の血流途絶のため肋間動脈が代償的に肺を潅流していると考えられます(図2)。

よって喀血の原因としては肋間動脈-肺動脈の存在があると考えられました。しかし気管支動脈塞栓術(肋間動脈+下横隔動脈塞栓)は残余の右肺の血流を完全に遮断してしまうことで壊死を引き起こすリスクがあるため、その他の原因血管として考えられる甲状頸動脈、外側胸動脈を塞栓する方針となりました(図3)。

図2 Shuttle画像の4D-MIP

 

画像作成においては、非造影の時相をマスク画像として、各時相でサブトラクションを用いることにより、肋骨に囲まれた胸壁を走る肋間動脈や内胸動脈などの血管を描出することができます。またマルチフェーズの画像を用いることで、CT値の高いフェーズを選択でき、各血管を末梢まで描出した3D画像を再構成することができ、より質の高い手術支援画像を提供することができます。

 


図3 4DCT画像とDSA画像の比較

 

赤色の血管が鎖骨下動脈から分岐する外側胸動脈(赤矢印)、甲状頸動脈(青矢印)、緑色の血管が肺動脈、青色の血管が肺静脈です。Angio施行時のDSAでは、肺動脈とのシャントを認めましたが同時に多数の肺実質の濃染が描出され、一部には肺動静脈との直接のシャントも認められました。この所見は今回の造影4DCTの画像所見と一致していたため、金属コイルでの塞栓を行いました。

 

まとめと今後に向けて

 

本症例は、Shuttle Scanによって広範囲の4D画像が得られたため、シャント部位の同定と治療方針の決定がスムーズに行うことができた症例です。
Revolution FrontierにはShuttle Scanのほか、肺野でより詳細に抹消を描出することのできる1024Matrix再構成や、肺のヨード取り込みを画像化して灌流低下領域を明瞭に示すヨードマップを提供するデュアルエナジー撮影など、呼吸器内科分野で有用な機能が搭載されています。

今後も装置ごとの特長をふまえ、撮影技術、画像処理技術を駆使して、より有益な画像を提供できるよう努めていきます。

 


千葉大学医学部附属病院 CT検査スタッフの皆様

 

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

撮影条件や部位、体格によって実際の被ばく量は変わります。
記載内容は、お断わりなく変更することがありますのでご了承ください。

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