Revolution CTの導入による検査ワークフローの改善と低被ばく化およびGSI撮影モードの運用

公益財団法人 天理よろづ相談所病院
放射線部  宮西 忠史 様

病院紹介

 

当院は奈良県北部に位置する天理市に昭和41年に開院しました。現在は外来診療棟と入院病棟である南病棟・東西病棟から成り、病床数は715床の基幹病院として機能しています。外来診療は30の診療科からなり、放射線関連部門では医師18名、診療放射線技師51名、看護師29名、事務員9名にて日々業務を行っています。CT装置は5台あり、その中の一つを2023年3月にRevolution CTに更新しました。

放射線部

 

心臓CT検査におけるワークフロー改善の可能性と被曝低下

 

Revolution CTを導入する以前も10年以上心臓CTを実施してきました。心臓CTは最大で午前中に11件の予約枠を設けています。以前は一検査20分で検査を行う為にCT検査担当者を常時2名配置していましたが、CT装置を更新したことにより担当者は1名で済むと考えています。これは図1にも示しますが、一件当たりの検査ワークフローが最適化され、業務が被ることなく行えることにあります。

過去の検査時はどうしても至適心位相を探すため、segment再構成等を繰り返し撮影と画像検索を両立するのは困難でした。しかし、最適心位相検索に「Smart Phase」、モーションアーチファクトを抑制する 「SnapShot Freeze2.0(以下SSF2)」を併用することにより、最適心位相の検索をほぼ自動で行えるようになりました。結果、心臓CTの最適心位相検索に時間を割く必要がなくなり、人員配置の最適化を行えるようになると考えています。

 


図1 当院の心臓CT検査におけるワークフロー模式図(□が更新前、が更新後)
心位相検索に時間を割かなくて済むため、一人で一連の作業が可能に

 

また被曝の最適化としても秀逸です。当院の心臓CT時のルーチンは、石灰化スコア撮影、冠動脈撮影、胸部撮影の3回撮影です。装置の更新前後で被曝を比較する際に、冠動脈撮影のCTDIvol[mGy] と全ての撮影における合算DLP[mGy・cm] にて行いました。

図2にグラフを示しますが、明らかに更新前後で被曝が低下しました。これはRevolution CTの心臓画像再構成に必要な心拍が1beat以下であることが大きな要因となります。装置の更新前に心臓CT撮影を行う際は心拍数にもよりますがsegment再構成を多用することがありました。このため、2beat、3beatの撮影を行うとも多く、それに伴い被曝線量も増加する傾向にありました。しかし管球回転速度の上昇、不整脈対応、SSF2の機能により、心臓CTの線量を50[%]以上低減することに成功しました。

 

図2 当院のルーチン心臓CT検査における被曝の推移(2022年4月~2023年5月)

 

GSI(Gemstone Spectral Imaging:デュアルエナジー)の簡略化と有用性

 

現在、Revolution CTにて撮影を行う場合、心臓CT以外の大半はGSIを使用して行っています。当院の他装置でもデュアルエナジー撮影は可能ですが、撮影時の設定、再構成などに時間がかかります。結果、よほどの理由がない限り撮影できないのが現状です。しかし、Revolution CTであればルーチン検査であっても手軽にデュアルエナジー撮影が可能となります。これは、GSI AssistやClinical IDを使用することにより、無駄な被曝を避け、同時並行画像処理技術により再構成画像が簡単に高速で出力されることにより実現しました。結果、後からGSIを利用した画像再構成が必要ではないかと思われる症例であっても問題なく画像再構成を行えています。

 

図3 PE疑いでのGSI撮影症例
PEが疑われた症例の造影検査。血栓がある()ことは間違いなかったが、後からヨード分布画像を作成。確認してみるとS5領域()も血流が低下しており、血栓がある()ことが判明した症例。

 

Revolution CTの恩恵

 

Revolution CTを導入したことにより、当院で特に恩恵が大きかったのが循環器領域となります。その循環器領域で有用であった症例を提示します。

 

図4 意思疎通困難、呼吸停止不可、20代患者
1年前に管球回転速度0.35[s]にて心電図非同期撮影を行っていた症例。今回、血中の酸素化が悪くなり、A-V Shuntの有無を確認する目的で検査施行。心電図同期を行った上でSSF2を使用。全体の心拍動によるモーションアーチファクトの低減だけでなく、SSF2を使用することで、よりモーションアーチファクトの少ない画像()での診断が可能となり詳細な情報の確認を行えます。もちろん冠動脈の評価も十分可能でした。

 

 

 

図5 TAVI 術前計測CT
装置更新前はTAVI術前の大動脈弁計測において、モーションアーチファクトのある状態で計測することが多かった。Revolution CTにおいても、管球回転速度は上昇したが、弁が最大拡張した位相でモーションアーチファクト()を抑えた画像を取得することは困難であった。
しかし、SSF2を使用することにより、弁のモーションアーチファクトが抑えられ()、計測をより簡便に、精度よく行えるようになった。

 

 

総括

 

  • 心臓CT検査におけるスループットの向上→人員配置の見直し。
  • 心臓CTの被曝線量の低下→患者様に優しい検査。(他の検査でも被曝低減できています)
  • GSIが日常使用可能→どんなタイミングでも誰でも撮影可能。操作者を選ばない。
    導入数カ月で、循環器をはじめ様々な領域でメリットがある装置と実感しています。今後、装置のスペックをフルに活用することで、さらなる臨床的なメリットの発見が可能であると期待しています。

 

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

撮影条件や部位、体格によって実際の被ばく量は変わります。
記載内容は、お断わりなく変更することがありますのでご了承ください。

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