ハイブリッド手術室用血管撮影装置Allia IGS740の使用経験

医療法人徳洲会 仙台徳洲会病院
放射線科
副技師長 古俣 絵美 様

 

宮城県仙台市にある仙台徳洲会病院は、徳洲会グループ13番目の病院として昭和61年(1986年)に開院した。令和4年(2022年)4月に最新の医療機器、設備を備えた現在の病院に移転し、地域医療機関と連携し貢献している。

この移転に際してハイブリッド手術室用血管撮影装置Allia IGS740(図1)を導入したので当院での使用経験について記述する。

 


図1 Allia IGS740外観

 

Allia IGS7の組合せ

 

GE HealthCare社のAllia IGS7にはフラットパネルディテクタ(以下:FPD)のサイズとTableが各2種類ずつある。FPDを1辺30cmもしくは40cmにするか、GE HealthCare社のカテ対応TableかMaquet Table(Getinge社)かである。当院では大視野の40cm FPDサイズと、外科手術に対応可能なMaquet Tableを選択した。

 

ハイブリッド手術室の運用

 

当院では緊急時に外科処置が必要となるシャント症例や、下肢血管拡張術、肝臓がん動脈塞栓術に用いられている。Allia IGS740はレーザーガイドによる自走式Cアーム方式を採用しており、不要な場合に完全退避できる(図2)。

Allia IGS740は手術における術野エリアである寝台上の天井にレールなどの構造物がない。そのため清潔な空気を送るHEPAフィルタを術野の上にレイアウト出来る。手術中の術野清潔度を保持できる環境は外科手術室として安心して運用が出来る。この利点を活かし外科手術にハイブリッド手術室を使用しながら、必要時にAllia IGS740で透視や撮影を行っている。

 


図1 Allia IGS740外観

 

Profile機能の活用

 

Allia IGS740ではProfile機能を有している。Profile機能は「装置に登録している情報の中から必要なものをカスタマイズ表示」するものである。様々な手技を行うハイブリッド手術室では手技に応じたプロトコル設定は勿論、オートポジション機能やラージモニターレイアウトも異なり、適切な選択をする作業が煩雑に陥りやすい。Profile設定をTACE、Shunt、Stent Graftといった手技毎に用意することにより、Profileを選択することで手技に最適なオートポジション機能やラージモニターレイアウト、プロトコルまで準備可能である。このProfile設定はユーザーでのカスタマイズを可能にしており、随時更新可能である。また1つのデフォルトを選ぶだけでなく「Profileに基づいた選択肢を表示可能」な点も慣れない診療放射線技師が装置担当となる場合に役立つ(図3)。術中に医師が切替えたい候補を予めストック出来るので、同一手技内でのプロトコルやラージモニターレイアウト変更を限られたリストから選ぶことが可能である。

 


図3 ProfileでPacemakerを選択した場合のプロトコル選択肢

 

タッチパネルのユーザーインターフェース

 

Allia IGS740のタッチパネルはボタンがまとめられ、シンプルで解りやすいユーザーインターフェースである(図4)。左側アイコンの一番上は前述したProfileの変更、画面左上は透視条件、右上は撮影条件、画面下はReview動画の選択と機能がまとまっている。DSA撮影後は最適なFrameをリファレンスイメージとして選択する工程があるが、画像停止後に画面スクロールでFrameを変更することが可能である。また左側アイコンはProfile毎に編集可能であり、3D RoadmapボタンやStopwacthボタンなど手技に応じて必要なボタンを表示させることで、ボタンを探す工程を低減してくれている。

 


図4 タッチパネルのユーザーインターフェース

 

WorkStation活用症例 -下肢末梢血管における3D Roadmap(Vision2)機能

 

Allia IGS740の特長はWorkStationの豊富なアプリケーションとの連動であり、術前CTAの画像を透視と重ねる3D Roadmap(Vision2)機能は一般的な機能となってきている。3D Roadmap機能を使用するにあたって、血管撮影装置専用のWorkStationで術前CTAを解析し必要な3Dデータを構築する作業が大きな懸念として挙げられるが、Advanced Workstation Volume-Share7(以下:AWVS7)の術前CTAデータ解析ソフトがサポートし、診療放射線技師として3D Roadmap機能を使用することを容易にしている。

下肢血管における使用例を示す。術前CTAではAortic bifurcationからの完全閉塞となっていた(図5)。完全閉塞部分へのアプローチに対して難渋することが予測されたため、下肢血管解析結果を用いた3D Roadmap使用を検討した。AWVS7は下肢血管解析ソフトを用いることで自動的に血管、骨(術中3D Roadmapの位置合わせ用)を作成する(図6)。狭窄症例などでは自動作成された血管3Dを透視と重ねる3D Roadmapが治療サポートになるが、CTO症例ではワイヤーを進めるためのラインの有用性に着目し、CTO部分を含めた血管センターラインを作成した(図7)。血管センターラインはワイヤーを進める際のReferenceとして有用(図8)であり、3次元での位置情報を有したラインであるため、角度変更やFOV変更、テーブル移動にも追従する。また治療前のDSAでは表示されないTrue面を表示させることは、手技を進めていく中で有用なサポートになったと当院医師よりフィードバックがあった。3D Roadmapは術中にボリュームレンダリングの透過度変更や表示の有無、センターラインの表示の有無も変更可能である。CTO部分を通過させている場合にはセンターラインの表示、通過後のバルーン拡張やステント留置時にセンターラインではなく、ボリュームレンダリング表示による病変部の逆描出など場面に合わせた変更を可能としている。また任意5倍までのデジタルズーム表示機能もあり、今後の症例で使っていきたい。

 


図5 DSA画像(左図は術前、右図は術後)

 


図6 自動生成された術前CTAの血管、石灰化、骨のVolume

図7 CTO部分を含めた血管解析によるセンターラインとLumen View表示

 


図8 術中での3D Roadmap(左図は血管Volume、右図は石灰化Volumeをfusion)
完全閉塞部分を含めた血管センターライン:緑色

 

最後に

 

ハイブリッド手術室は血管撮影室と同等かそれ以上に執刀医師、麻酔科医師、看護師、臨床工学技士そして診療放射線技師のチームで治療にあたることが求められる。各スタッフをサポートし、サポートを貰いながらより良い治療に貢献していきたい。

 

 

※お客様のご使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

 

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