ここでは、全身あらゆる部位において、様々な患者状態に合わせて用いたAIR™ Coilsの活用事例を紹介する。
Case1 側臥位の腰椎検査
60代の男性。椎間板ヘルニアにて経過観察のため腰椎MRI検査を実施。検査当日痛みが強く、仰臥位困難なため側臥位にて検査施行(図3)。そこで、AIR™ Coilの向きを変えて使用し腰部全体にコイルをフィットさせ覆うことが出来た結果、通常の検査と遜色ない画像を取得でき、診断に貢献できた一例。
図3 側臥位の腰椎検査におけるAIR™ Coilのセッティング例と臨床画像
Case2 妊婦の子宮胎盤検査
30代の妊婦。重複子宮の疑いにて経腟分娩可能か評価する目的にてMRI検査を実施。
検査時35週で推定胎児体重が2384gであり、本人より仰臥位困難の訴えがあったため、側臥位でAIR™ Coilの向きを変えて腹部全体にコイルを覆いポジショニングを行った。側臥位にすることで患者さんの負担も少なくセッティングもスムーズで検査が施行でき、出産方法の決定に貢献できた一例(図4)。
図4 妊婦の子宮胎盤検査におけるAIR™ Coilのセッティング例と臨床画像
Case3 新生児の脊椎検査
生後7日の新生児。出生前MRI検査時に脊椎異常を指摘されており、出生後に脊椎MRI検査を実施。
Spineコイルや従来からあるGEM Flex Coilを検討したが、対象が小さい事やコイルの硬さ、また体動や固定が懸念された。MP Coil自体クッション性があるので、MP Coilの上に仰臥位のポジショニングで、固定も問題なく検査が施行できた(図5)。Th10~L1は分離不能で急峻な後湾変形を認め、脊柱管はこの上下で狭小化。脊髄空洞症や脂肪腫は認めず分節性脊椎形成異常症と診断された一例。
図5 新生児の脊椎検査におけるMP Coilのセッティング例と臨床画像
Case4 新生児の門脈肝静脈シャント非造影検査
生後6か月の乳児。超音波検査時にて体循環門脈シャントを指摘されており、複数シャントの有無、血管腫の有無についてMRI検査を実施。ポジショニング時にGEM Flex Coilの使用を検討したが、体動や患児の固定及びコイルの固定が懸念されたため、MP Coil を使用し検査を施行。
AIR™ Coilsに使用シーケンスの制限はないため、Inhance Inflow IRで検査を実施。門脈P3と左肝静脈間にシャント形成を認め、その他シャント形成は認められなかった(図6)。
結果として患児の体型に合わせてコイルをフィットさせることができ、ポジショニングも簡便かつスムーズに行うことができた結果、追加鎮静もなく迅速な検査実施に貢献できた一例。
図6 新生児の門脈肝静脈シャント非造影検査におけるMP Coilのセッティング例と臨床画像
Case5 足部腫瘤造影検査
20代の男性。5年ほど前に海外で足部の手術を行っており、同足部の腫脹と痛みを訴えMRI検査を実施。足底部の強い痛みがあり、歩行困難かつ圧着困難のため、足部の荷重を和らげた体位にてMP Coilを挟む様にポジショニングを行い検査を施行。
右第1,2中足骨間に腫瘤を認め、周囲筋肉や腱を押し広げ、骨の間を通ってダンベル状に発育しており、第1中足骨に一部浸潤あり、境界明瞭で周囲骨の信号変化乏しい。肉腫やデスモイド、孤立性線維性腫瘍(SFT)などが鑑別に挙げられた(図7)。
患者さんの痛みが強くポジショニングが限定される中、負担が少ない体位でコイルを挟むだけで簡単に検査が行うことができ診断に貢献できた一例。
図7 足部腫瘤造影検査におけるMP Coilのセッティング例と臨床画像
Case6 爪下腫瘤検査
10代の女性。半年前から第1足趾に痛みがあり足趾の爪甲部下に結節の出現と爪甲の変形がみられたためMRI検査を実施。結節サイズが8mmほどと小さかったので、MP Coilで足趾を挟むようにポジショニングを行った。
母趾末節骨足背内足部から足尖足背方向に突出構造あり、内部の骨髄様構造が末節骨構造と連続、軟骨帽様構造を認めることから、骨軟骨腫、外骨腫疑いとなった(図8)。
画像の様にコイルで挟むだけで足趾に合わせたFOVでの撮像が可能で、連続する骨髄の描出が出来た一例。
図8 爪下腫瘤検査におけるMP Coilのセッティング例と臨床画像