WBDWIが最も威力を発揮するのが転移の検索である。当院においても全WBDWIの検査のうち約70%が転移検索目的である。その中でも骨転移は特に多く、骨転移の画像パターンには,①溶骨型,②造骨型,③骨梁間型の3つの基本型とその混合型が知られている(骨転移診療ガイドライン一部抜粋)が、当院で実施したWBDWIと他モダリティの画像所見(図9)を比較しても全ての骨転移の分類で描出可能であることが示唆された。特にWBDWIが有用であった骨転移について述べる。
図9 骨転移の病理分類
Case1 泌尿器科:前立腺癌の骨転移検索目的
70代、男性。PSA著明高値(6000ng/mL)の前立腺癌で転移検索目的にてWBDWIを施行した。WBDWIで上腕骨、肋骨、横突起、骨盤内リンパ節転移が認められる(図10)。この症例はPSAが著明高値であったため、CTを撮影せずにWBDWIを撮像することで迅速な治療方針決定に貢献することができた。依頼医からもWBDWIは骨の情報だけでなく、リンパ節や臓器の情報も得ることができるので非常に有用であると評価が得られた。
図10 前立腺癌の骨転移検索目的
Case2 乳腺外科:乳癌の全身検索目的
40代、女性。乳癌術後にて5年前に肝転移に対して治療開始。その後、CTにて骨転移とリンパ節転移を認め、全身検索目的にてWBDWIを施行した。WBDWI(①)とFusion(②)で上腕骨、肋骨、椎体、大腿骨など多発骨転移が認められる。CT(③)では椎体の中心に石灰化(➞)を認めるが、DWI(④)とFusion(⑤)では無信号であることから良性石灰化を疑う所見である。CT(③)の石灰化周囲(➞)にDWI(⑦)で高信号を認め、溶骨性骨転移を示唆する所見である。また、仙骨にも同様のCT(⑥)の低吸収域(➞)にDWI(⑦)でも同部位に高信号を認め、溶骨性骨転移が疑われる(図11)。依頼医からは、乳癌のフォローは長期にわたり定期的に画像検査を行う必要があるため、WBDWIは被ばくがなく、繰り返し検査を行うことが可能であるため非常に有用であると評価が得られた。
図11 乳癌術後の全身検索目的
Case3 呼吸器内科:肺癌の骨転移検索目的
70代、男性。肺癌に対して放射線化学療法後、腰痛出現するも単純CTでは原因を特定できず、WBDWIを施行した。WBDWI MIP(①)では、頸椎、胸椎、腰椎、鎖骨、骨盤骨、大腿骨など多発骨転移と肝転移も認められる。②~④の矢状断像では、WBDWI MIP(①)で椎体に重なっていた棘突起の転移、CT(⑤⑨)では描出困難な腰椎、仙骨、腸骨転移(➞)がMRI(⑦⑩)では明瞭に描出されている。まさに骨梁間型骨転移の典型例である。単純CTでは描出されていない肝転移(➞)においてもDWI(⑦)、T2WI(⑧)では明瞭に描出されている(図12)。依頼医からは肺癌は骨梁間型骨転移が多く認められるため、肺癌の骨転移検索にWBDWIは非常に有用であると評価が得られた。
図12 肺癌の骨転移検索目的