Discovery MI.xは検出器が5Ringな為、体軸方向の撮像範囲は25cmとなっており、大半の患者が頭頂から鼠径部まで5Bedで撮像する事ができます。1Bedの収集時間を基本90secと設定している為、最短で全身を450sec(=7.5min)で撮像することが可能です。AMFは呼吸性体動が最も多い気管支分岐部から腎臓下縁までを含むように2Bedで設定しています。
次に投与量についてです。装置更新前は18F-FDGを全量投与していました。その時、当院の中央値は237.9MBqとDRLs2020の基準値240MBqを何とか下回る結果でした。しかし、放射能量が高い第1検定のみを集計したところ247.6MBqという結果になり、DRLs2020の閾値を超えていた事がわかりました。対応策として、分注機能付きの自動投与装置を使用し、3.7MBq/kgを投与する事で第1検定の中央値は204.9MBqに改善する事ができました(表1)。
表1. DRLs2020と当院投与量中央値の比較
[基本収集条件]
Uptake Time : 50~70min
Base Bed Time : 90sec
Total Time : 450sec(+AMF)
BSREM(Q.Clear): β700
Dose : 3.7 MBq/kg
続いて収集時間可変撮像の方法を説明します。当院では後述する収集時間可変方法①~③の積を計算し撮像しています。
(収集時間可変方法① UpTake Timeの遅延を補正する為の収集時間延長)
当院のUpTake Timeは基本50minとしています。しかし、移動が困難な方、他患者撮像の兼ね合い等で撮像開始が遅れた場合は18Fの放射能減衰を補正する為、収集時間を延長して撮像しています。表2は基準の50minと同カウント取得するにはどれくらい収集時間を延長すれば良いかを物理半減期から算出した表になります。例えば、70分後に撮像開始するときは収集時間を90秒から102秒変更して撮像します。
表2. UpTake Timeが遅延した場合の減衰補正表
(収集時間可変方法② 18F-FDGの投与量不足を補正する為の収集時間延長)
前述したとおり、デリバリー18F-FDGを使用して検査を行っており、分注機能付きの自動投与装置を使用して3.7MBq/kgを投与しています。しかし70kgの患者を検査する時、投与量は259MBq必要ですが、包装単位が185MBqの18F-FDGを検定時刻丁度に投与する場合、投与量不足となります。これを補正する為、以下の計算式を用いて収集時間を延長し、259MBq投与した時と同等のカウントを収集できるようにしています。
投与量不足の補正 = 体重 × 3.7 (MBq/kg) ÷ 実際の投与量
実際に計算すると、70kg × 3.7MBq/kg ÷ 185MBq = 1.4となり、基本の収集時間を1.4倍にして撮像しています。
(収集時間可変方法③ 体格補正の収集時間延長)
体格の大きい患者を撮像する場合、標準体型の患者と同程度の画質を得るためには、投与量を増やすよりも撮像時間を延長する方が効果的とされています。現在、半導体検出器で撮像する場合のBMIでの体格補正方法を考案中の為、暫定的に光電子増倍管での論文や文献より体格補正係数を引用し撮像しています。
表3. 体格補正係数表例(引用: デリバリーPETの基礎と臨床 日本メジフィジックス)
以上が収集時間可変撮像の説明になります。
例として、下記の条件で1Bedの収集時間を計算します。
( 体重:70kg、BMI:27、18F-FDG Dose:185MBq、Uptake Time:70min )
収集時間可変方法①:Uptake Time 70min 表1より → 102 sec
収集時間可変方法②:70kg × 3.7MBq/kg ÷ 185MBq = 1.4倍
収集時間可変方法③:BMI 27 表2より → 1.28倍
1Bedの収集時間:102sec × 1.4 × 1.28 ≒ 183 sec
実臨床においても毎患者この計算をおこない収集時間を算出し撮像しています。