OSEM vs Q.Clear
-てんかん検査における頭部FDG条件の最適化までの道のり-


静岡県立総合病院
放射線部 放射線技術室 PETイメージングセンター
孕石 圭 様

1.病院紹介

 

静岡県立総合病院は静岡県静岡市に位置し、静岡県における中核的医療施設として先進的医療に取り組むとともに、医師・薬剤師・看護師などの教育研修施設および臨床研究施設を目的とした病院です。また、急性期医療、救急告示病院として、循環器・呼吸器疾患を始め各疾患の2次救急に対応するとともに、地域医療支援病院として地域の医療機関と適切な役割分担・連携を図り地域医療の確保に注力しています。(Fig.1)

Fig.1 静岡県立総合病院外観

 

2.はじめに

 

当院では2022年6月のPET/CT装置更新に伴い、Discovery MI-AM editionを導入しました。(Fig.2)当院のPET/CT撮像件数は年間約4000件(月平均約330件)で内訳は、全身腫瘍が最も多く、次いで頭部(てんかん)が多くなっています。その他、心サルコイドーシス、頭部メチオニンなど、全身多岐に渡って幅広い検査を行っています。今回、Discovery MI-AM editionにおける頭部(てんかん)FDG-PET撮像条件について収集時間、マトリックスサイズ、再構成条件比較(OSEM vs Q.Clear)を行いましたので報告します。

Fig.2 Discovery MI検査室外観

 

3.方法

 

3-1. Hoffmanファントムの作成
日本核医学会から公開されているPET撮像施設認証のためのファントム試験「18F–FDGとアミロイドイメージング剤を用いた脳PET撮像のためのファントム試験手順書 第5版」に基づき、Hoffmanファントムを作成しました。

3-2.収集/再構成条件
HoffmanファントムをPET/CT装置のヘッドレストに固定し、撮像視野中心にファントム中心がくるように配置し、封入放射能量が20 MBqとなる時刻からリストモード収集で30 分間のエミッション撮像を行いました。
画像再構成条件をTable.1に示します。Hoffmanファントムを30分撮像したRAW Dataより作成した撮像時間5、10、15、20、25、30分のDataを用い、マトリックスサイズ128、192、256、384のPET画像を再構成しました。また、画像再構成法は①OSEM法(臨床からの要望で従来画像に近い画像)と、②Q.Clear法(装置の分解能が最大限発揮できる画像)を用いました。

 

Table1 画像再構成条件

 

4.評価方法

 

4-1. %コントラスト値による物理評価
前項で得られた各PET画像の灰白質と白質に関心領域 (Region Of Interest:ROI)を設定し、灰白質ROIと白質ROIから%コントラストを算出しました。また、%コントラストはPET撮像施設認証の基準値として公開されている55 %以上を満たすかどうか物理評価を行いました。%コントラストの算出には日本メジフィジックスの画像解析ソフトPET quactIEを用いました。

4-2. 分解能の視覚評価
画像の視覚評価は実際の臨床でPET画像の読影に使用するワークステーション端末で行い、画像を表示するカラールックアップテーブルは Invert Gray scale とし、表示ウィンドウレベルはSUV lower 0 [g/ml]-upper 5 [g/ml]としました。

 

5.結果

 

5-1. %コントラスト値による物理評価
① OSEM法
OSEM法おけるマトリックスサイズと収集時間の%コントラスト値の比較%をFig.3に示します。%コントラスト値は全てのマトリックスサイズにおいても収集時間5分以上で基準値55 %以上を満たし、マトリックスサイズが小さいほど高い値となりました。

 


Fig3. OSEM法におけるマトリックスサイズと収集時間の%コントラスト値の比較

 

② Q.Clear法
Q.Clear法におけるマトリックスサイズと収集時間の%コントラスト値の比較%をFig.4に示します。%コントラスト値は全てのマトリックスサイズにおいても収集時間5分以上で基準値55 %以上を満たしました。%コントラスト値は、マトリックスサイズが小さいほど高い値となる傾向となりました。また、OSEM法と比較し、Q.Clear法ではどの条件でも%コントラストが高い結果となりました。

 


Fig4. Q.Clear法におけるマトリックスサイズと収集時間の%コントラスト値の比較

 

5-2. 分解能の視覚評価
① OSEM法
OSEM画像をFig.5に示す。分解能の視覚評価においてマトリック数192以上では差を認めませんでした。

 


Fig5. 描出能の視覚評価 OSEM法

 

 

② Q.Clear法
β値150のQ.Clear画像をFig.6に示す。分解能の視覚評価では、マトリック数256以上では差を認めませんでした。

 


Fig.6 描出能の視覚評価 Q.Clear法(β150)

 

 

6.考察

 

Q.Clear法における画像再構成条件はOSEM法と比較しコントラストが高く、分解能が向上した画像が得られました。分解能の視覚評価では、マトリック数256以上で視覚的に差が見られなかったため、当院ではマトリックスサイズ256で再構成することにしました。収集時間に関してはOSEM法、Q.Clear法で5分でも十分なコントラスト、分解能が得られることが確認できました。(Fig.7)

 


Fig7.1. 臨床画像OSEM法

 


Fig7.2. 臨床画像 OSEM法

 


Fig7.3. 臨床画像 Q.Clear法

 


Fig7.3. 臨床画像 Q.Clear法

 

 

45歳、女性、左(L)海馬の硬化とFDGの集積低下を認める。

 

7.まとめ

 

今回、Discovery MI-AM editionにおける頭部FDG-PET撮像条件について検討を行い、Q.Clear法における画像再構成条件はOSEM法よりコントラストが高く、分解能が向上していました。今後、臨床において撮像をすすめ頭部FDG-PETの短時間収集に関する検討をさらに進めていきたいと思います。

 

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