核医学治療のイメージングの実践と今後の期待


岡山大学病院 医療技術部
放射線部門 中嶋 真大 様

施設紹介

 

岡山大学病院は、岡山県の中核病院として役割を担っており、病床数は855床でその内、核医学治療病室を3床有しています。当院では、I-131を用いた甲状腺機能亢進症や甲状腺がんに対する治療をはじめ、Y-90を用いたCD20抗原陽性B細胞リンパ腫に対する治療、Ra-223を用いた去勢抵抗性前立腺がんの骨転移の治療を行っています。さらに、2021年12月から中国四国地方で最も早くLu-177を用いたソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍の治療を行っています。

今回、当院で行っている核医学治療のイメージングについて報告します。

 

当院の核医学治療

 

当院で行っている核医学治療の概要をFig.1に示します。その中で、治療後のイメージングを行っているのは、I-131を用いた甲状腺がんとLu-177を用いた神経内分泌腫瘍です。

 

 


Fig.1 当院で行っている核医学治療の概要

 

核医学治療の撮像ポイント

 

● I-131のイメージング
I-131のγ線のエネルギーは、364 keVであるため、高エネルギー用コリメータの使用が推奨されますが、当院では、高エネルギー用コリメータを有していないため、中エネルギー用コリメータを使用しています。そのため、スターアーチファクトが発生する場合があります。スターアーチファクトは、γ線がコリメータ隔壁を貫通することによって発生し、形状が六角形であるため、星のような形状で斜めに発生します。スターアーチファクトは、放射能が高いほどアーチファクトも強くなるため、I-131の取り込みが多い症例では注意が必要です (Fig.2)。

 

 


Fig.2 スターアーチファクトの有無

 

 

● Lu-177のイメージング
Lu-177のγ線のエネルギーは、113 keVと208 keVであるため、収集するフォトピークの設定によってコリメータを選択する必要があります。Fig.3に各コリメータとフォトピークで収集したフラッドソース線源画像を示します。低エネルギー用と拡張低エネルギー用は、208 keVのフォトピークでスターアーチファクトが発生していますが、中エネルギー用では、発生していません。Lu-177のイメージングでは、フォトピークとコリメータにより画質は異なるので最適なフォトピークとコリメータを選択する必要があります。さらに、定量値を含めた評価が必要だと考えます。

 

 


Fig.3 各コリメータとフォトピークで収集した画像

 

今後の期待

 

核医学治療時におけるイメージングは、病巣部への集積確認だけでなく、臓器別に線量測定が行えるメリットがあります。特にLu-177は、骨髄抑制が起こる場合があるため、線量測定は重要になってくると考えます。最新の核医学ワークステーションXeleris Vからリリースされた線量測定が行えるアプリケーションであるQ.Thera AIは、経時的に臓器ごとの線量測定が行えるソフトウェアで、AIを使用して自動的に臓器のセグメンテーションができます。再現性や利便性が良いことから、今後、線量測定の普及が期待されます。

 

※お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

JB07177JA